今日のアフリカ

  • Home
  • 今日のアフリカ

今日のアフリカ

最新10件

依然アフリカで活動するワグネル

2024/12/17/Tue

 プリゴジンの死後、ロシア?アフリカ関係がどのように再編されつつあるのか、なお不明点が多い。11日付ルモンド紙の記事は、その一端を明らかにしている。  中央アフリカ、マリ、ブルキナファソ、ニジェールといった国々に対しては、2023年8月にプリゴジンが事故死した後、国防副大臣のエフクロフやロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のアヴェリヤノフが訪問を繰り返し、関係再構築に取り組んできた。  中央アフリカやマリでは、プリゴジンを崇拝する人々がおり、ワグネルのメンバーが依然として活動している。先日も、中央アフリカでワグネル創設に関わったプリゴジンとウトキンの銅像が建てられたことが報道された。両国ではそれぞれ、1500人、2500人程度のワグネル兵が活動しており、プリゴジンの死後も兵力に変化がない。こうした兵員は、ロシア政府の承認を受けつつ、半自律的な活動を行っているとみられる。  中央アフリカで、ワグネルは金やダイヤモンド採掘、木材輸出などの事業を行いながら、トゥアデラ大統領の警備に関わっている。中央アフリカで強い影響力を持っている人物に、ドミトリ?シティがいる。フランス語が達者で、プリゴジンとも深い関係にあった(2023年1月28日付ルモンド)。ロシア文化会館など文化広報事業を行い、トゥアデラ政権高官と深い関係を持ちながら、幾つものビジネスを経営している。  マリでは、ワグネルの兵員がアシミ?ゴイタ軍事政権と協力して軍事作戦に従事している。並行して鉱物採掘事業も行っており、ワグネルが2022年に設立した鉱業企業Mariko Miningは11月7日に英国の制裁対象となった。  2023年11月、プリゴジンの息子パヴェル(26歳)が父親の相続人に指名され、彼が創りあげた企業グループコンコルドのトップに就任した。パヴェルは、中央アフリカのシティ、またマリ軍部などともつながりがある。もっとも、ある程度の自律性があるとはいえ、パヴェルはクレムリンのコントロール下にある(12月11日付ルモンド)。  以上から推測されるのは、ロシアがワグネルを完全に政府のコントロール下には置かずに、一定の自律性を与えていることだ。これがどの程度一貫した戦略なのかは不明である。ロシア政府といっても、プーチン、国防省、GRU、FSB(ロシア連邦保安庁)、SVR(ロシア対外情報庁)など、複数の政府機関がアフリカ諸国との関係構築に動いている。  米国の非営利団体でロシア、特にワグネルに関する情報を公開しているAll Eyes on Wagnerは、プーチンの論理は「分断統治」であり、いろいろな人物を競わせて、第二のプリゴジンが出てこないようにする戦略をとっていると分析している。ロシア側から様々な機関がアフリカ側にアプローチするなかで、ワグネルの活動がうまくいっているところでは、そのままにしているということだろう。今のところ、それに対するプーチンやGRUのグリップは効いているようだ。  マリのようにワグネルが戦闘で敗北を喫するなどして、その機能に疑問符が付されると、「アフリカ部隊」に置き換えられて、より国防省直轄という形をとる可能性が強まるのであろう。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

ガーナ大統領選でNDCのマハマが勝利

2024/12/15/Sun

 12月9日、選挙管理委員長は7日に実施されたガーナ大統領選挙で、ジョン?ドラマニ?マハマ(NDC)が勝利したと発表した。マハマが56.55%の得票で対立候補のマハムドゥ?バウミア(NPP)が41.61%であったから、マハマの大勝といえる。全土の16州のうち、アシャンティ州、東部州、北東州以外でマハマが最大の得票を獲得した。  バウミアは、「世界の投資家コミュニティが、ガーナが平和で民主的な国であると信じることが重要だ。これは我々の重要な資産だ」と述べて敗北を認めた。下院選挙においても、NDCが議会の3分の2の議席を獲得して勝利した。  マハマとNDCはいずれも大勝したわけだが、政権運営には課題が山積している。ガーナは2022年にデフォルトに陥り、厳しい経済運営を迫られてきた。新政権にとっても、財政問題が喫緊の課題となる。  マハマは、選挙運動のなかで、前政権下で打ち出された増税路線を見直すと訴えた。しかし、昨年IMFとの間で合意した30億ドルの緊縮プログラムとどのように整合性を取るのかが問われる(12月13日付Africa Confidential)。  マハマは、父親がエンクルマ政権期に活躍した、二世政治家である。1991~95年に日本大使館で勤務した経験がある。2012~17年には大統領を務めた。この時期ガーナでは石油開発が進展し、それとともに財政支出と債務が拡大したと言われる。前政権期の遺産とも言える債務問題にどう対応するのか、注目される。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

ベルギー政府の混血児政策に「人道に反する罪」適用

2024/12/08/Sun

 12月2日、ブリュッセル控訴審は、独立前のコンゴ民主共和国出身の混血児を両親から引き離した行為が「人道に反する罪を構成する」として、ベルギー国に対して、5人の原告に5万ユーロずつ支払うよう命じた。初審の判決を覆す内容であった。原告側のイルシュ(Michèle Hirsch)弁護士は、「植民地の犯罪が人道に反する罪とされた初めての判例」だと評価した。  この裁判では、コンゴ人の母とベルギー人の父との間に生まれた女性5人が、ベルギー国家を訴えていた。判決は、ベルギー国が「その出自だけのために」混血児を標的としたと述べる。子供たちは3歳~7歳で家族から離され、宗教施設に預けられ、しばしば名前や誕生日も変えられた。15,000~20,000人が同様の仕打ちにあったと見られる(2日付ファイナンシャルタイムズ)。  イルシュ弁護士によれば、当時の政治指導者や宗教指導者は、混血児を「恥辱であり、罪深い子供」だと見なしていた。混血児は、白人至上主義を掘り崩し、黒人の反乱を指導する可能性があるという意味で、二重の危険性を孕むと見なされた。  一審では、こうした行為が行われた当時に「人道に反する罪」の概念がなかったことを理由に同概念の適用を認めなかったが、控訴審はこれを覆した(2日付ルモンド)。  過去の非人道的行為を今日的観点から評価し、謝罪のみならず賠償や補償を与えるという流れは、今後も続いていくだろう。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

サヘル諸国で鉱業企業への圧力

2024/12/07/Sat

 12月6日、マリで金鉱を採掘するカナダのバリック?ゴールド社の社長(南アフリカ人)、また採掘サイトのマリ人責任者などに逮捕状が出された。資金を不法に持ち出した嫌疑がかけられている(6日付ルモンド)。最近、サヘル諸国では、様々な形で鉱産物採掘企業への政治的圧力が強まっている。  11月8日、マリの首都バマコで、オーストラリアの金鉱山開発企業レゾリュート?マイニング社の英国人幹部3名が拘束された。レゾリュート社は、租税支払いをめぐって政府と係争中であったが、幹部の逮捕を受けて1億6000万ドルの支払いに同意し、3人は25日に解放された。バリック?ゴールド社も9月に幹部4人が拘束されている。  マリ、ブルキナファソ、ニジェールでは、軍事政権の発足以降、天然資源に対する主権を強調する主張が強まり、政府が鉱業企業への出資割合を引き上げたり、国有化したりといった動きが目立っている。  マリは昨年鉱業法を改定し、企業からの納税額を増やそうとしている。同国鉱業部門に展開する企業は、政府との再交渉を求められている。その中で、バリック?ゴールド社やレゾリュート社のような大手は厳しい条件を突きつけられている(11月13日付ルモンド)。  ブルキナファソも、この7月に鉱山法を改定し、最近金鉱山を2つ国有化した(11月25日付けルモンド)。  ニジェールでは、政府とフランス企業オラノ(旧アレヴァ)社がウラン採掘をめぐる確執を続けている。昨年7月のクーデタ以降、軍事政権はフランス企業のオラノ社に厳しい政策を取るようになった。この6月には、最大のウラン埋蔵地イムラレンにおけるオラノ社の開発権を剥奪した。  12月4日には、オラノ社が、ニジェールの子会社であるソマイール社に対する操業上のコントロールを失ったとの声明を発表する事態となった。現在ニジェールは隣国ベナンとの対立を抱え、ベナンの港湾を経由してウラン輸出ができない状態が続いている。このため、オラノ社は、多数株式を保有するソマイール社のウラン生産を停止すると発表したのだが、その後もニジェール側の指示で操業が続けられている。  ニジェール軍事政権は、天然資源に対する主権は自分たちのものだとして、ウラン生産を続ける姿勢である。  こうしたサヘル三国の動きには、イスラム急進主義勢力による国内治安悪化に目立った成果を上げられない軍事政権の暴挙という側面が確かにある。しかし、鉱業部門への政府による規制強化や契約の見直しがアフリカで広がっていることに注意すべきだろう。  セネガルのジョマイ?ファイ政権は、発足以降、石油?ガス開発の契約見直しに繰り返し言及している。コンゴ民主共和国のチセケディ政権も、前政権で結ばれた鉱山開発の見直しを行ってきた。  主権意識の高まりは軍事政権に限られない。自分たちの天然資源が不当に搾取されているという認識は、その感情と結びついている。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

バイデン米大統領、アンゴラ訪問

2024/12/04/Wed

 12月2日、米国のバイデン大統領が4日までの日程でアンゴラを訪問した。任期終了間近のレームダック期の訪問である。それでも、米国大統領としては、2015年にオバマがケニアを訪問して以来のアフリカ行きとなる。  今回の訪問では、コンゴ民主共和国とザンビアに跨がる産銅地域(カッパーベルト)と大西洋岸のロビト港を結ぶ、ロビト回廊計画に焦点が当たっている。ここには20世紀初頭に英国が建設した鉄道が通り、2015年に中国の出資で改修された後、2022年にはスイスのTrafigura社、ポルトガルの建設企業Mota-Engil社、ベルギーの鉄道企業Vecturis社のコンソーシアムにコンセッションが与えられた。米国はここに30億ドル以上を出資し、大幅に改修する計画である(12月2日付ルモンド)。  アンゴラはアフリカでナイジェリアに次ぐ産油国だが、長く中国の強い影響下にあった。米国はここにテコ入れして、中国に対抗にしたい思惑がある。コンゴ民主共和国のコバルトなど、重要な資源が中国企業の手に抑えられているという危機感がある。  アンゴラも先週、ロシアのダイヤモンド企業Alrosaを退去させるなど、米国寄りの姿勢を強めている。一方中国は、今年に入ってザンビアとタンザニアのダルエスサラーム港を結ぶタンザン鉄道に10億ドル以上出資して改修工事を行うなど、カッパーベルトの資源アクセスには力点を置いている(2日付ファイナンシャルタイムズ)。  米国民主党政権でエネルギー担当の特別顧問を務めたエイモス?ホクスタインは、米国は冷戦後アフリカ進出に出遅れたと述べている(上記FT)。今回の訪問が、米国の変化を示すものだろうか。今回は、レームダック期の大統領によるアンゴラ一カ国だけの訪問であり、これが米国の対アフリカ政策積極化を示すのかどうかは、なお判然としない。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

チャドがフランスとの軍事協定破棄を通告

2024/12/01/Sun

 28日、チャドのクラマラー(Abderaman Koulamallah)外相は、「フランスとの国防関連協力協定を終わらせる」と発表した。フランスは現在チャドに軍事基地を持ち、約1000人の兵士を駐留させているが、この声明はこれに対する事実上の撤退要求となる。ちょうどこの日チャドを訪問していたフランスのバロ(Jean-Noel Barrot)外相との会談後、わずか数時間のタイミングであった。  クラマラー外相は、この決定が「フランスとの関係断絶ではない」と明言している。声明では、「フランスは最も重要なパートナーだが、チャドは成長し、成熟したこと、またチャドは主権国家であって、主権を求めることをフランスは理解しなければならない」と述べた。  サヘル地域では近年、マリ、ブルキナファソ、ニジェールと、反仏を掲げる軍事政権が次々に誕生し、フランス軍の撤退が続いていた。しかし、そのなかでチャドは、親仏、親西側の立場を維持してきた。長く政権を掌握したイドリス?デビィ?イトノが2021年4月に武装勢力に殺害された後、息子のマハマトが非合法的手段で政権を継承した際、フランスはこれを認め、チャド寄りの姿勢を明確にした。  一方、チャドは最近、外交関係の多角化を図ってきた。今年1月には、マハマトがプーチンの招待でロシアを訪問し(1月23日付ルモンド)、ハンガリーのオルバン首相の息子が秘密裏にチャドを訪れる(1月27日付ルモンド)といった動きがあった。その他、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)といった国々とも関係深化を図り、軍事支援などを受けるようになった。  クラマラー外相は、この決断が「熟慮の結果取られた」ものであり、チャド?フランス関係の「歴史的転換」だと認めている。「チャドは完全なる主権を表明し、国家的優先事項にしたがって戦略的パートナーシップを再定義すべき時期」になったというのがチャド側の主張である。  この決定はフランスにとって、甚大な衝撃となる。ちょうど25日、ボケル(Jean-Marie Bockel)大統領個人特使が、フランスのアフリカにおける軍事基地の再編に関する提言をマクロン大統領に提出したところだった(11月26日付ルモンド)。フランスは現在、セネガル、コートジボワール、ガボン、チャド、ジブチに軍事基地を持っており、このうちジブチ以外について縮小の方針が打ち出されると見られていた。  今回のチャドの発表により、フランス軍基地再編計画は見直しを余儀なくされよう。折しも、セネガルのジョマイ?ファイ大統領が、インタビューの中で、フランスとの関係を重視しつつも軍事基地の存在に疑問を呈し、フランス兵には遠からず退去してもらうとの見解を表明した。「我々は米国、中国、トルコなどと軍事基地なしで協力関係を結んでいる。???フランスだってそれができるでしょう」(11月28日付ルモンド)というわけだ。  フランスとアフリカの関係が、大きく変化しつつあることを実感させる動きである。アフリカ側が繰り返す「主権」という言葉について、改めて考える必要がある。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

ナミビアにおけるLGBTQIA+とメディア報道

2024/11/30/Sat

ナミビアのNPO法人(NID)は、24日、LGBTQIA+についての包括的な報道に関するワークショップをメディア関係者向けに開催した。 このワークショップは、「包括的な表現のためのメディアのエンパワーメント―ナミビア?ハウスからの洞察」というテーマで開催された。性的およびジェンダーの多様性の声と物語を広め、全市民に対する尊厳の必要性を強調することを目的としている。 NID(Namibia Institute for Democracy)はワークショップに先立ち、10月12日に「ナミビア?ハウス―LGBTQIA+の人びとための包括的な空間の構築(The Namibian House: Building Inclusive Spaces for LGBTQIA+ Persons)」を出版している。この本は、アフリカにおける植民地主義と同性愛嫌悪の促進、アフリカのレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、LGBTQI+運動、そして今日のナミビアにおけるLGBTQI+の人びとの権利に影響を与えている法的枠組みについて扱っている。その中で、メディアが世論を動かし議論を前進させる力があることを強調し、ジャーナリストがLGBTQI+の問題を敏感かつ正確に報道できるよう訓練されるべきだと提言している。 NIDのプログラムマネージャーであるヤシンタ?カスメ氏は、会見において、「この本を出版した目的は、アフリカとナミビアのLGBTQI+の人びとの物語と経験を明らかにすること、そしてメディア関係者や立法者にヘイトスピーチや差別の有害な影響について教育することである」と述べている。全文オープンアクセスで、インターネット上で閲覧可能である。(宮本佳和) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、アフリカの留学生誘致のためのクラウドファンディングを、11月20日~1月10日の間、実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

スーダン停戦決議にロシアが拒否権

2024/11/21/Thu

 18日、国連安全保障理事会で、スーダンの停戦を求める決議がロシアの反対で否決された。決議は英国とシエラレオネが共同提案したもので、14ヵ国が賛成し、反対はロシアだけだった。  英国のラミー外相は、「一ヵ国の反対で理事会の意思が挫かれた。この国は平和の敵だ。ロシアの拒否権は恥ずべき行為だ.ロシアはまた、本当の顔をさらけ出した」と強く非難した。米国のトーマス?グリーンフィールド国連大使も、「ロシアはアフリカと協調するようなことを言っているが、アフリカ諸国が賛成する停戦決議に反対した」と述べた。  一方、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は、ロシアは紛争当事者による停戦を支持すると述べて、決議案を「ポストコロニアルの香りがする」と批判した。ロシアの拒否権に対しては、スーダン外相が「スーダン及びその国家機関の独立と統一を支持するものだ」と評価する声明を出している。  スーダン内戦は、国軍指導者ブルハーンと準軍事組織RSFの指導者ヘメティの対立を軸に動いてきたが、ロシアは最近になってブルハーン寄りの姿勢を強めている。スーダンに停戦を呼びかける前回の決議の際、ロシアは棄権している。  ブルハーンと国軍はRSFに軍事力で勝利できると踏んでおり、そのために国際社会による停戦呼びかけに消極的な態度を取るのだと考えられる。10月に入って、国軍側が優位に立っているとの分析記事が掲載された(10月11日付ルモンド)。ロシアはスーダンに接近したい思惑があり、そうした情勢を理解した上で、国軍側に秋波を送っていると見られる。  18日、米国のスーダン特使Tom Perrielloが18日、ポート?スーダンを訪問してブルハーンと面会した。当然、国連をめぐる状況が議論になったと考えられる。  2023年4月にスーダン内戦が始まってから、既に1年半が経過した。世界で最も深刻な人道危機と言われ、ウクライナやガザを上回る数の死者や避難民が生まれているが、周辺国の介入や当事者の頑なな態度のために停戦が成立せず、人道危機が拡大し続けている。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

個別ページへ

ODAを大幅削減するヨーロッパ諸国

2024/11/20/Wed

 14日付ルモンド紙によれば、ヨーロッパ主要国でODAを大幅に削減する動きが相次いでいる。直接的には、右派政党が政権を握った影響が強い。ODAの使い方にも大きな影響が出ている。  フランスの来年度予算案では、ODAが34%削減される。オランダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなども、ODAを削減する意向を示している。2023年のODA世界総額は2237億ドルで、4年連続で増加した。しかし、ODAの多くはウクライナや難民関連のものだった。  右派と極右政党が主導するスウェーデンは、2024年から25年にかけて、9億7500万クローネ(8400万ユーロ)の援助を削減する。その後も削減を続け、2027年以降は援助額が国民総所得の0.7%水準を下回る見込みである。右派と極右が政権を主導するオランダも、3年かけてODAを三分の二に減らす。ドイツは、2022年に国民総所得の0.85%のODAを提供していたが、2023年には0.79%、2024年には0.7%に減少させる。英国も、援助額を国民総所得の0.7%から0.5%に減らす意向である。  ODAを自国企業の利益や移民?難民対策に用いられることが増えた。移民対策の観点からチュニジア、モロッコ、さらにはニジェールに接近するイタリアのメローニ政権はその典型だが、スペインもサンチェス政権の下で、カナリア諸島に漂着する不法移民の出身国向けに援助を振り向けようとしている。英国では、ODAの28%がアサイラムシーカー向けの資金として内務省に配分されている。  開発援助が供与国の経済的利益に向けられることも一般的になった。イタリアは、最大の石油?ガス企業であるENI創業者の名を取ったMattei計画を打ち出し、途上国、特にアフリカの石油?ガス、民間部門支援を推進している。EU議会でも、「EUの経済利益を強化し、エネルギー移行に必要な原材料へのアクセス」を確保するといった主張が強まり、貧困削減には言及されなくなった。被援助国の裁量で契約企業を選べる援助は次第に少なくなり、ひも付き援助が増加している。  一方で、人道援助や最貧国向けの援助は大幅に削減されている。2022年には援助総額の22.5%が最貧国に向けられたが、その10年前には30%が最貧国向けであった。  ODA政策の国際潮流はこれまでも様々に揺れ動いてきたが、2010年代以降はそれが現実主義に大きく振れている。2015年の開発協力大綱で国益を前面に打ち出した日本の動きも、この文脈にある。ただ、ヨーロッパでは、右派政党、極右政党が政権を握ったことで、急激な動きになった。上記ルモンド紙でも、左派のサンチェス政権が成立しているスペインではODA削減の動きは顕在化していないと報じられている。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。

個別ページへ

シェルはナイジャー?デルタから撤退するか?

2024/11/10/Sun

 ナイジェリアのナイジャー?デルタで石油採掘を続けてきたシェル、エクソンといった大手石油会社が、同地域から撤退し、オフショア生産に切り替える意向を示している。特に、最大手シェルの動きが波紋を広げている。これに関して、11月6日付ファイナンシャルタイムズが興味深い記事を掲載している。  シェルは子会社のShell Petroleum Development Company of Nigeria (SPDC)を地元企業のコンソーシアム(Renaissance Africa Energy) に売却する手続きを進めていたが、先月ナイジェリア規制局はその売却を認めない決定を下した。その結果、SPDCは操業も売却もできない宙づりの状態になっている。  SPDCは、ナイジェリア最大で、最も歴史ある石油会社である。3,173kmのパイプライン、263の油井、56のガス田、6つのガスプラント、2つの輸出港、発電所1つを所有する。SPDCの資産を管理するSPDC JVは、SPDCが30%、国有企業のナイジェリア国家石油会社 (NNPC)が55%、TotalEnergiesとAgipがそれぞれ5%を所有しているが、シェルが強力な意思決定権を持っている。  シェル側は、SPDCをナイジェリア企業に売却したい意向を明らかにしている。ナイジャー?デルタ地域におけるシェルの活動には、複雑な過去がある。石油採掘に伴う環境汚染が地元コミュニティの反発を生み、オゴニランドで住民が反対運動を展開。1995年には指導者の一人ケン?サロ=ウィワが、軍事政権に処刑される事態に至った。  シェルのパイプラインは何度も流出事故を起こしており、ナイジャー?デルタに深刻な環境被害を与えてきた。2011年、UNEPは、オゴニランドの汚染に深刻な懸念表明している。  原油流出の背景には、パイプラインや掘削インフラの老朽化に加えて、石油を盗むためパイプラインが意図的に破壊されるという実態がある。ナイジェリアの1日あたり原油生産量は約130万バレル(2024年9月)だが、毎日30万バレルが窃盗や妨害活動などで失われているという。  地元NGOは、コミュニティとの十分な話し合いのないままシェルが撤退することは許されないと主張している。また、シェルは国際的な評判を気にしていたが、ナイジェリア企業が経営権を握れば汚染がさらに進むとの懸念もある。  多国籍企業は自らの活動にどこまで責任を負うべきか。グローバリゼーションによって民間部門の力が巨大になる中で、その社会的責任をめぐる議論はいっそう高まることだろう。(武内進一) 欧宝体育平台_欧宝体育在线-app下载現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

個別ページへ